2022年の日本の総広告費は、電通が毎年実施している調査によると前年比4.4%増の7兆1021億円で2年ぶりのプラスとなりました。これは1947年の調査開始以来、初めて7兆円を突破し、過去最高額となり、社会のデジタル化が進み、広告の世界もネットがけん引するということを示していたかと思います。
ちなみに内訳を見てみるとマスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞)合計は前年比2.3%減の2兆3985億円となり、このうち、テレビは2.0%減の1兆8019億円。新聞は3.1%減の3697億円という結果でした。
一方、インターネット広告費はどうなったかというと同14.3%増の3兆912億円と堅調。2019年に初めて2兆円を突破してから、わずか3年で1兆円伸長しています。企業の販売促進活動でのデジタル活用が進み、リスティング広告やデジタル販促も好調だったネット広告が広告費全体に占める割合は43.5%となり、初めて4割を超えたことは大きなニュースとなりました。
しかしながら、プラットフォーム側では好調の裏で逆の大きな動きもみられました。それは人員削減です。
以下は2022年以降の大手プラットフォームの人員削減の情報です。
また最近では音楽ストリーミング大手のスポティファイが 1,500人(2023年12月05日 )の人員削減を行うとの情報があり、業界の大きな話題となっています。
このことについてCEOのダニエル・エク氏は「経済成長が減速していること、資本コストが上昇していることが影響を与えている」と述べています。要は企業成長に必要な人員数とのバランス調整が必要であるということのようですが、同社の直近の業績は、売上高は前年同期比11%増の34億ユーロ、粗利益は26.4%増、MAU(月間アクティブユーザー数)は26%増の5億7400万人と好調だったため、先々の経済情勢も見据えてかなり慎重なスタンスに入ったとも言えるかと思います。

一方で広告主側はどのような動きを取っているかというと、
ユニリーバ(Unilever)、コカ・コーラ(Coca-Cola)、P&Gなどの企業では、今年下期に広告支出を増やす計画だというが、市況回復の度合いは米国のほうがヨーロッパより勢いがあるなど、地域によって異なるようです。予算自体は増える見通しでも支出が複数のプラットフォームに分散されるため、メディアオーナーのなかでも受けられる恩恵には濃淡が生じるとも言われています。このことはある意味で広告主が制限なく巨額の広告費をメディアに注ぎ込む時代の終焉を迎えていることを示唆しており、オンライン広告といえどもオフライン広告(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など)と同じ局面に立たされているとも言えるかと思います。
しかしながらネガティブ面にのみ囚われることなく新たな発芽やビジネスの潮流にも目を向ける必要があります。それはリテールメディアと生成AIの登場です。
リテールメディアとは
リテールメディア(Retail Media)は、小売業界における広告とメディアの統合を指す用語です。これは、小売業者が自社の販売プラットフォームや店舗などを活用して、広告主としての役割を果たす新しい形態のデジタル広告手法です。以下に、初心者向けにリテールメディアの基本的な概念を解説します。
リテールメディアの基本概念
リテールメディアは、小売業者が自社の販売プラットフォームや店舗を広告スペースとして提供し、広告主がそのスペースで商品やサービスを宣伝する仕組みです。
広告主は、小売業者の購買層にアクセスし、ターゲットとなる顧客に直接広告を届けることができます。
主な特徴
ターゲティングの精度: 小売業者は顧客の購買データや行動データを有しており、これを活用して特定の顧客層に広告を表示することが可能です。
購買意向の高い顧客にアプローチ: 小売業者のプラットフォームでは、商品を探しているあるいは既に購買意向のある顧客に直接アプローチできます。
主な形態
検索広告: オンラインストア内での検索結果ページに広告を表示する形式です。
ディスプレイ広告: ウェブサイトやアプリ内で商品やサービスを紹介する広告です。
ソーシャルメディア広告: 小売業者が運営するソーシャルメディアプラットフォーム上での広告です。
メリット
購買データの活用: 小売業者はユーザーの購買データを保有しているため、より効果的なターゲティングが可能です。
顧客との直接的な接触: 広告主は小売業者のプラットフォームや店舗を通じて、顧客と直接的な接触ができます。
課題と注意点
プライバシーの問題: 顧客データの利用に関するプライバシーの懸念があります。
競争が激化: 多くの小売業者がリテールメディアを採用しており、競争が激化しています。
リテールメディアは、デジタル広告の進化とともに台頭している手法であり、小売業者と広告主の両者にとってメリットがある一方で、注意が必要な側面も存在します。
リテールメディアを活用している企業は増えており、以下はいくつかの事例です。ただし、具体的な取り組みやキャンペーンは常に変わる可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
Amazon Advertising
Amazonは、自社のオンラインマーケットプレイスをリテールメディアとして活用しています。広告主は商品ページ上や検索結果ページに広告を掲載し、購買意欲の高いユーザーに直接アプローチします。
Walmart Connect
Walmartも自社のオンラインプラットフォームを活用しています。Walmart Connectは、Walmartのウェブサイトやアプリ上での広告プラットフォームで、広告主は商品のプロモーションを行います。
Target Roundel
Targetは、自社の広告プラットフォームであるRoundelを通じて、広告主がTargetの顧客層に直接アプローチできる環境を提供しています。これにより、顧客の購買履歴やデモグラフィック情報を活用したターゲティングが可能です。
eBay Advertising
eBayも自社のオンラインマーケットプレイスを広告プラットフォームとして活用しています。広告主はeBay上での商品ページや検索結果ページに広告を出稿し、購買層に訴求します。
Kroger Precision Marketing
Krogerは、食品小売業を中心に展開しており、Kroger Precision Marketingを通じて、顧客の購買データを活用してターゲティングされた広告を提供しています
これらの企業は、リテールメディアを通じて顧客との直接的な接触や効果的なターゲティングを実現し、広告主にとって効果的なプロモーション手段となっています。

生成AIとは
生成AI(Generative AI)は、人工知能(AI)の一分野で、新しいデータやコンテンツを生成するためのアルゴリズムやモデルを指します。これらのモデルは、学習データから学習し、その学習結果を元に新しいデータやコンテンツを生成することができます。生成AIは、画像、テキスト、音声、動画など、さまざまな種類のデータ生成に利用されています。
以下に、いくつかの生成AIの代表的な技術やモデルを紹介します。
GAN(Generative Adversarial Network)
GANは、生成モデルの一種で、2つのネットワーク、生成器(Generator)と判別器(Discriminator)が相互に競い合いながら学習します。
生成器は、本物のデータに似たデータを生成し、判別器はそれが本物かどうかを判定します。
両者が競争し学習することで、高品質な生成が可能になります。
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)
BERTは、自然言語処理のための事前学習モデルであり、文脈を理解した言語表現を生成します。
文脈を考慮することで、より自然な文章生成や言語理解が可能になります。
OpenAI's GPT(Generative Pre-trained Transformer)
GPTは、大量のテキストデータを学習して、その文脈から文章を生成することができるモデルです。
ユーザーが与えた文脈に基づいて、続きを予測的に生成することができます。
VAE(Variational Autoencoder)
VAEは、潜在空間を介してデータを生成する確率的なモデルです。
画像や音声などのデータ生成に利用され、潜在変数を操作することで異なるデータを生成することができます。
生成AIは、クリエイティブなコンテンツの生成、データ補完、異常検知、仮想環境の構築など、様々な応用分野で利用されています。一方で、生成された情報の信頼性や倫理的な問題なども考慮する必要があります。
以下は、メーカーや小売業などが生成AIを広告やマーケティングに活用している事例です。
L'OrealのAI美容アシスタント
L'Orealは、AI美容アシスタントを導入しています。このアシスタントは、ユーザーが顔の写真を提供すると、髪型やメイクアップの提案をAIによって生成します。これにより、ユーザーは製品を試す前に効果をシミュレートすることができ、製品購買の促進が期待されています。
Coca-ColaのAIによる広告キャンペーン
Coca-Colaは、AIを活用して広告キャンペーンを実施しました。このキャンペーンでは、AIが顧客の好みや行動を学習し、個別の広告を提供することで、消費者とのエンゲージメントを高めました
AlibabaのAI推薦エンジン
Alibabaは、eコマースプラットフォームでAI推薦エンジンを活用しています。購買履歴やクリック履歴から得られたデータを元に、顧客に対して個別の商品や特典を提案し、ユーザーエクスペリエンスを向上させています。
IKEAのARアプリケーション
IKEAは、AR(拡張現実)を活用したアプリケーションを導入しています。ユーザーはスマートフォンを使って家具やデコレーションを仮想的に配置でき、自分の部屋にどのように収まるかを確認できます。これにより、購買前に製品を仮想空間で試すことが可能になります。
これらの事例は、メーカーや小売業が生成AIを導入して製品の体験や購買プロセスを向上させ、消費者との関係を深めるために活用している例です。
当然デジタルメディアや広告会社も、次の成長に向けてリテールメディアとの提携を進めています。小売企業の持つ顧客と販売データを使ってターゲティングする。バナー広告だけではなくビデオ広告も活用することで、拡販のためだけではなく、商品やブランド認知を上げる目的のブランディング広告も行われています。
生成AIにおいても例えば、BuzzFeedでは生成AIで作られた性格クイズやチャットボットを利用したゲームなどのコンテンツを展開していくと発表したり、音楽ストリーミングサービスのSpotifyはユーザー向けのパーソナルなプレイリストを自動生成する目的で生成AIを利用していくと発表しています。

コロナ禍で起きたデジタルシフトとデジタル化からの揺り戻しは非常に速いスピードで起こり、それに付いていけなかった企業もいくつかあります。ただ多くのデジタルメディア・広告企業は人員削減などによって財務体質を整え、次の成長段階を目指して、新たな施策に取り組んでいることがこれらの動きからも読み取れるかと思います。
それでは2024年に向けてAEやマーケターはどのようなマインドセットを持つべきでしょうか。
2024年に向けてAEやマーケターが成功するためには、以下のようなマインドセットが重要です。
データ駆動の重要性を理解する
デジタルメディアやリテールメディアの活用において、データ駆動のアプローチはますます重要となります。顧客データや販売データを分析し、それに基づいて戦略を策定しましょう。データから得られる洞察を元に、より効果的なターゲティングやパーソナライズドなコミュニケーションを実現することが求められます。
リテールメディアとデジタルメディアの統合
リテールメディアとデジタルメディアを統合して、ユーザーエクスペリエンスをシームレスにすることが重要です。顧客がオンラインで商品を検索し、オフラインで購入するといった行動を促進する戦略を構築しましょう。
生成AIの有効活用
生成AIを活用して、クリエイティブな広告やコンテンツを生み出すことが求められます。BuzzFeedやSpotifyのように、ユーザーエンゲージメントを高めるために生成AIを利用する新しいアプローチを模索し、実践していくことが重要です。
柔軟性と迅速な対応
デジタルシフトは急速に進んでおり、マーケットや技術の変化に迅速に対応する柔軟性が求められます。アジャイルなマーケティング戦略を展開し、テストと学習を通じて迅速な最適化を行いましょう。
顧客中心のアプローチ
デジタルメディアやリテールメディアを活用する際には、常に顧客のニーズや期待に焦点を当てたアプローチが必要です。顧客の声を受け入れ、フィードバックを反映させながら、より良い顧客体験を提供することが重要です。
新興技術への理解と採用
技術の進化は速いペースで進んでいます。AI、AR、VRなどの新興技術を理解し、ビジネスにどのように組み込むかを検討しましょう。これによって、競争力を維持し、新たな市場機会を見逃さないようになります。
これらのマインドセットを持ちながら、変化の激しいデジタル環境においてマーケティング戦略を展開し、企業やブランドの成長に寄与していくことが重要です。
最後に
新たな年が始まると同時に、未知のチャレンジに向かって進むAEやマーケターの情熱と創造力は、ビジネスの未来を切り拓く原動力となります。時には困難にぶつかり、失敗や試練があるかもしれませんが、それらは成長の機会となり、新しい洞察や力強さをもたらすものです。
デジタルメディア、リテールメディア、生成AIなど、新しいテクノロジーを駆使し、柔軟な発想で未来の広告やマーケティングを築いていくことができる絶好の機会です。お客様との深い関係を構築し、感動を生み出すコンテンツを通じてブランドの価値を高めましょう。そして何よりも、チームワークと共感を大切に同僚や協力関係に感謝し、協力して目標に向かって進んでいくことで、より大きな成果が得られることでしょう!


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