人類はこれまで様々な歴史の中で創造と破壊を繰り返しながら文明を作り上げてきました。今日のデジタルマーケティングにおいて主流となっているアドテクノロジーもリーマンショックによって職を失った金融システムのエンジニア達がその入札システム(RTB)を模倣して作り上げたものと言われています。

RTBはそれまで曖昧だったターゲティング の精度を上げ、また広告単価を適正化することで、広告主だけでなくSSPやDSP(DMP)など様々なプレイヤーを生み出し、市場を拡大してきました。2023年の今でもその拡大はとどまるところがなく、もはや4マスといわれるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌合わせてもその年間取扱高はデジタル広告に届かないものとなっています。
しかし市場が拡大し、アドテクが進化するにしたがって、悪意のあるボットといわれるプログラムによってクリックを水増ししたり、不適切なサイトへ誘導したりする広告詐欺(アドフラウド)の技術も進化しています。
ある調査によると2022年の日本国内の広告詐欺の被害金額は 1300億円にものぼるといわれています。
そこで2009年に米国で設立され、広告主やメディア企業に対して広告キャンペーンの効果を測定し、ブランドセーフティや視認性などの品質保証を提供し取り組みを始めたIntegral Ad Science(IAS)アドベリフィケーションといわれるボットや不適切サイトへの誘導などの広告詐欺を防ぐための取り組みとして日本でも2021年の4月にJAA、JIAA、JAAの3者によって一般社団法人 デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)が設立されたのです。

JICDAQは、広告会社や配信事業者に対してガイドラインにそった広告活動を行なっているかを細かく審査し、審査基準をクリアした事業者には認証を不付与することで、企業のブランドの向上およびデジタル広告市場全体の健全化に努めており、2023年2月現在では、JICDAQの登録アドバイザー111社、品質認証事業者136社、登録事業者167社、賛助登録事業者2社、サポート官公庁1自治体が参加しています。
JICDAQの審査基準は?

JICDAQの審査基準は、以下の要素を考慮して行われます。
事業内容と目的
JICDAQの趣旨に合致し、信頼性のある事業を行っているかどうか。
法令遵守
法令や規制に適合し、適切な情報管理体制を持っているかどうか。
信用情報の取り扱い
信用情報の適切な取り扱いができるかどうか。
財務状況
財務面が安定しており、加盟による経済的な負担がないかどうか。
その他の要件
JICDAQが定めるその他の基準や規定に適合しているかどうか。
※審査基準の詳細や具体的な要件については、JICDAQの公式ウェブサイトを参照してください。
広告会社の取り組み
広告会社のデジタルマーケティングの担当者は特に重要な使命を担うことになるでしょう。担当者はブランドセーフティ担当者として様々な部署との調整やJIQDACへの定期的な報告、そしてトラブル時には訴求な可決を求められることになります。
ブランドセーフティとは
ブランドセーフティ(Brand Safety)は、広告やマーケティング活動において、ブランドのイメージや評判を保護し、代わりな環境やコンテンツから守るための取り組みや対策を講じます。に大切な場所に表示されるリスクを考慮することが重要です。
ブランドセーフティは、広告主が自社の広告が適切でないコンテンツや環境とされるのを阻止するために、ブランドイメージが染まるのを防ぐために、適切な広告の構成や配信を管理することを進めます。ようなコンテンツ、性的な表現、差別的なコンテンツなど、ブランド価値観に合わないコンテンツを避けるための対策です。
広告主や広告代理店は、ブランドセーフティに関するツールやテクノロジーを利用し、適切な環境に広告が表示されないように注意を払います。これには、コンテンツの自動スクリーニングや指定されたリストに基づいたサイトやコンテンツのフィルタリングなどが含まれます。ブランドセーフティは、ブランド危険性を考慮するための重要な主張の一つです。
無効トラフィックとは
無効トラフィックは、広告主やウェブサイト運営者に不正な利益をもたらす、意図的に誤ったトラフィックのことを指します。これにはさまざまな種類がありますが、主なものには次のようなものがあります。
- ボットによるトラフィック: 自動化されたソフトウェアやスクリプトによって生成されたトラフィックで、実際のユーザーではなく、プログラムによるものです。これには広告をクリックするボットも含まれます。
- クリック詐欺: 広告をクリックすることで誤った収益を得る手法です。通常は自動化された手法や人間が大量にクリックを行うことで広告主に支払いを発生させることを意図しています。
- 非人間のトラフィック: 人間の振る舞いを模倣するソフトウェアによって生成されたトラフィック。このようなトラフィックは、人間のような行動をすることができますが、実際には機械によるものです。
- 隠れた広告: ユーザーが広告をクリックしたり、表示したりすることを意図せずにウェブページやアプリに隠れた方法で配置された広告のこと。
これらの無効トラフィックは広告主にとって迷惑であり、誤った成果をもたらすため、広告主や広告プラットフォーム、そしてウェブサイト運営者がそれらを検知し、除去するための取り組みを行っています。
JIQDACの認証を受けるためには社内外において適正な広告活動をしているか、また広告被害に合わないための対策、そして万が一起きてしまった場合の対応策について整備しておかなければなりません。ブランドセーフティ担当者はそれらを中心になって行う重要な役目を果たすためにJICDAQの定める様々なガイドラインに準拠するように先導していく必要があります。ざっくりですが参考までにブランドセーフティ担当者の行う業務について以下にまとめています。
1. 自社ポリシーの説明と広告主への確認
広告の発注を受ける際にはきちんと自社のポリシーの説明と広告主の定めているポリシーを確認する必要が あります。そして配信事業者側にもそれを伝え、実行させることが必要です。
2. 発注担当者への教育と計画的なコミュニケーション
ブランドセーフティ担当者は自部署だけでなく社内の発注担当者へも運用方法の教育も必要となります。また、きちんと運用しているか定期的な報告を求める必要があります。
3. 配信事業者や委託先広告会社の審査とポリシーの確認
配信事業者および二次受けといわれる委託先広告会社が反社やペーパーカンパニーでないかの審査と独自で定めているポリシーについての確認をする必要があります。
4. 配信事業者や委託先広告会社への広告プレイスメントの確認
もし広告主から配信事業者および委託先広告会社がどのような配信面に掲載しているか確認を求められたときは掲載先一覧レポートを提出する必要があります。そのため事前にレポートの提出が可能かどうかを確認する必要があります。
5. 委託先や配信事業者のボット対策の取り組みの確認
配信事業者および委託先広告会社がどのようにボット対策を行っているか(アドベリツールを使用など)確認する必要があります。広告配信システムにおいてブロックなどの機能を持たない事業者は早急に対応を求めなければなりません。
6. トラブル時のエスカレーションなどの体制整備
上記のような対策をとっていても広告詐欺の被害に遭う可能性があります。そのような場合の社内でのエスカレーションフローやJICDAQへの迅速な報告体制を整えておくことも重要です。

※配信事業者や委託先広告会社がJICDAQの認証事業者である場合
もし取引先がJICDAQの認証を受けている場合は確認フローを簡略化することができます。詳しくはJICDAQに確認することをお勧めします。
代表的なアドベリフィケーションツールベンダーのご紹介
IAS社(Integral Ad Science Japan 株式会社)
IASは、洗練されたテクノロジーを用いて高品質な広告メディア環境を構築するアドベリフィケーションのグローバルリーダーとして知られており、2015年からは日本国内においても広告主とパブリッシャーの広告予算を広告不正やブランドの損害から守るために、広告主のビジネス目標を達成するためのソリューションを提供しています。
同社はFacebook、YouTube、YDN、GDNなどのプラットフォームに対応し、世界の企業と協力しており、ビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティに関する計測や対策運用型広告で可能になっております。モニタリングやブロッキングなどのさまざまなサービスを提供し、企業のニーズに合わせたソリューションを展開しています。
Momentum株式会社
Momentum株式会社は、「無価値な広告をゼロにする」というコンセプトのもと、国内有料アドベリフィケーション事業を開始しました。に注力し、インターネット広告環境の健全化を推進しています。
Momentum株式会社は広告プラットフォームや広告代理店と協力し、運用型広告に関してビューアビリティ、アドフラウド、ブランド危険に対処できる体制を整えています。
具体的には、HYTRA(ハイトラ)と呼ばれるツールを活用し、広告主のニーズに合わせて入札前や入札後のブロックを選択することで、正しい広告を提供しています。余裕を持って配信に対する対策も積極的に行っています。
以上、今回は進化し続けるアドテクの光と闇について取り上げました。
アドテクの進化でターゲティング の精度が増し、広告費の適正化が実現する一方でそれを悪用するテクノロジーの出現や、プライバシーの侵害という大きな問題も横たわっています。
今後これらのアドベリフィケーションへの取り組みはデジタルマーケティングの担当者だけでなくデジタル広告に関わる人間の社会的責務と言えるでしょう。


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